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真紅の花嫁
第2章 濃藍のフィアンセ
作品はすべて朝山紫郎のものだった。
そのどれもが、朝比奈市の各所を描いた、幻想的な風景画だった。
一緒に出てきた手紙類で、武藤工業の先々代、武藤重吉が当時職工だった紫郎の面倒をみていたことがわかった。
紫郎の活躍時期は一九五〇年代前半。
中央画壇と接触もなく、独自の感性でこれだけの幻想画を描いたとしたら、新たな発見といっても過言ではない。
とはいえ、まだまだ研究しなくてはいけないことがたくさんあった。
紫郎の詳しい経歴。
武藤家との関係。
同時期の幻想画家たちとの関連。
真波はその仕事に名乗りを上げた。
紫郎の作品に惚れ込んだためだ。
自分の力で、なんとかこの無名の画家を世に知らしめたかった。
その過程で、陽介と何度か会ううち、プライベートなデートに誘われるようになり、昨年の暮れにプロポーズされた。