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真紅の花嫁
第2章 濃藍のフィアンセ
前菜に頼んだアボカドとエビのサラダをつまみつつ、近況を報告しあう。
場慣れしている陽介に連れられて、頻繁に出入りするうち、真波も緊張することなく、こういう高級な店で食事できるようになった。
(いろんな面で、わたしも早く慣れていかないと)
陽介とのデートは、なにもかしこまった店ばかりではない。
チェーン系の居酒屋でも、ファストフード店でも、平気で入っていく。
けれど、結婚し、妻ともなれば、フォーマルな場への出席が多くなるのは明らかだった。
結婚式は三ヶ月後に迫っていた。
あちらの両親への挨拶や結納も終わり、式場を決めて招待状も出した。
新婦側の主賓は、美術館の館長にお願いしてある。
しかし、新郎側の来賓の方が、極端に多くなった。
県内でも一、二を争う有力企業の跡取りともなれば、自分たちだけの意見だけで進めるわけにはいかない。
招待客にも政治家や財界のお偉方が多数いる。
ごく普通の家庭で育った真波には、いささか気が重かった。
席順や挨拶の人選は、陽介に一任した。
そんななか、できるだけ真波の負担を減らそうと、陽介はとても気をつかってくれる。
来週には、ウェディングドレスの仮縫いに行く予定である。
結婚に合わせて、陽介の両親が新居を建ててくれていた。
そろそろ引っ越しの準備もしなくてはならない。
新婚生活への不安は大きいが、それと同じくらい、期待もまた大きかった。