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真紅の花嫁
第14章 茜色の空
そして一週間。
美術館での変わらぬ日常。
綾音の顔は見なくなったが、亮は何事も無かったかのように、きちんと仕事に励んでいる。
誰が見てもよく出来た若者だ。
真波ひとりがやりきれない思いを抱えていた。
あれ以来、身体の奥に不穏な熾火がくすぶり続ける。
夜はベッドの中で悶々とし、昼間は何度もショーツを取り替える日々。
ふとした拍子に火がついて、たまらなく肉の悦びが欲しくなる。
夜、独り寝のベッドの中で誘惑にかられそうになったことも、一度や二度ではない。
そのたびに、脳内に亮のささやきがよみがえる。
――ひとりでしちゃだめだよ。
疼く身体を持て余す日常が続いた。
なによりも真波が困惑するのは、悪辣な所業をした少年をどうしても憎めないことだ。
それどころか、あの日のことを忘れたかのように、一度も真波に接触してこない亮が恨めしい。
自分で自分がわからなかった。
いよいよ〈朝山史紫郎と日本の幻想画家展〉がはじまろうとしているのに、やるべきことに身が入らない。
ここ数日はつまらないミスばかりしていた。
情けなくて泣きたくなる。