この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真紅の花嫁
第14章 茜色の空
真波は相手の眼をまっすぐに見て、
「望月さん、武藤工業ってご存じですよね」
紀美子は意外そうに瞬きした。
もっと違うことを聞かれると思っていたようだ。
「まあ、知ってけど。
この辺じゃ有名だからね」
「姫川家は」
「朝比奈の古い家柄でしょう。
いったい何なの?」
「いきなり申し訳ありません。
実は桐原君…………
武藤家と姫川家に恨みがあるようなんですが。
それについて何かご存じのことありますか?」
「亮が?
何それ。聞いたことないわね」
「朝山紫郎については?
桐原君の口から、そういう名前が出たことはないですか?」
「たしか市立美術館で今度、特集をやる画家だっけ?
亮はアルバイト先のことは何も言ってくれないの」
女教師の顔にあるのは戸惑いだけだった。
とぼけているのだろうか?
しかし、最初からしらばっくれる気なら、この場に来なかったはずだ。