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真紅の花嫁
第14章 茜色の空
真波は肩の力を抜く。
綾音について尋ねるのはやめた。
姫川の名を出しても反応がないのだとしたら、余計な情報は与えない方がよい。
亮の言っていた〈復讐〉という言葉。
十代の少年が口にするにはあまりにも違和感がある。
もしかしたら彼の家族や生い立ちにヒントがあるのかもしれない。
そう考えて、今日のアポを取ったのだ。
「望月さんは以前、桐原君の先生だったんですよね。
彼の親御さんに会ったことはありますか?」
「あるわよ」
あっさりと言う。
「担任だったからね。
一度だけ、お父さんという人が三者面談に来たことがあるわ」
「三者面談に父親というのはめずらしくないですか?」
「最近はそうでもないけど――
父子家庭だったのは確か」
「どんな方でした?」
「かなりの年配で意外だった。
六十くらいかな。最初、おじいさんかと思ったもの。
生気のない人で、どうしてこんな男が亮の父親なんだろう、って」