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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
先輩学芸員はあきれ顔になって、
「それって困窮した画家と、かつてのパトロンということでいいんじゃないの?」
もちろん、それが一般的な解釈だろう。
真波自身も本気でそんなことを考えたわけではなかった。
「どうしてそんな突飛なことを言い出したのかわかんないけどさ。
もしかして武藤家の誰かからの情報?
矢崎が疑問に思うようなら、調べてみる価値ありかもよ」
「いえ、ほんの噂話で
……忘れてください」
足早にその場を去る。
将人のことも聞いてみようかと思ったが、やめにした。
門倉志郎の死後、その息子がどうなったか結局わからずじまい。
著作権者の調査をした真波が誰よりも知っている。
今さら、市ノ瀬をわずらわせる必要はあるまい。
亮と武藤家の因縁がつかめそうでつかめない。
すでに亡くなっていた亮の母親についても望月紀美子に確認したが、朝比奈市とも武藤工業や姫川家とも、まったく関係のない女性だった。