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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
エントランスホールで気を落ち着けていると、外に広がる庭園に、ほっそりとしたワンピース姿があった。
ケヤキの木陰に佇み、美術館の方を気にしている。
姫川綾音だった。
(まさか、また……)
あの日以来だった。
亮に呼び出されたのだろうか。
だとしたら、新しい淫らな命令でも課せられているのかもしれない。
そう思ったとたん、眼が合った。
真波が躊躇しているうちに、つかつかと近づいてきた。
「矢崎さん、少し時間ありますか?
見せたいものがあるんです」
いつもの人当たりの良さはなく、切り口上である。
「どこか二人きりになれる場所がいいんですけど」
なにかよからぬことを企んでいるのでは、と疑う。
しかし、その顔はひどく真剣だった。
真波も彼女ときちんと話をしておく必要を感じていた。