この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
「いいわ。こちらにいらっしゃい」
しばらく離れても搬入に問題あるまいと判断し、一緒に会議室に入った。
八畳ほどのスペースにテーブルとパイプ椅子が並んでいるだけの部屋だ。
今日は使用する予定はない。
向かい合って座っても、綾音は膝にベージュピンクのトートバッグを抱えて、じっと俯いている。
待っていても要件を切り出そうとしない。
真波はさすがに焦れて、
「見せたいものって、なにかしら」
そう促しても、女子大生は黙ったままだ。
むらむらと負の感情がわいてきた。
人形のように愛らしい顔をして、どれほど破廉恥なことをしてきたのか。
それを全部知っている真波の前で、どうしてこんなに取り澄ましていられるのか。
いや、もちろん真波だって、彼女に恥を知られている。
亮に貫かれてイキまくったことは知らないはずだが、その前の、ショーツに染みをつくってヒイヒイよがっていた事実は知られている。
知られているから、平然としていられない。
「姫川さん――
桐原くんとの歪な関係、やめた方がいいんじゃなくて」
思いがけず、強い口調になった。
こういう言い方ではだめだ、とわかっていたが、とめられない。