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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶


「いいわ。こちらにいらっしゃい」

しばらく離れても搬入に問題あるまいと判断し、一緒に会議室に入った。
八畳ほどのスペースにテーブルとパイプ椅子が並んでいるだけの部屋だ。
今日は使用する予定はない。


向かい合って座っても、綾音は膝にベージュピンクのトートバッグを抱えて、じっと俯いている。
待っていても要件を切り出そうとしない。

真波はさすがに焦れて、

「見せたいものって、なにかしら」

そう促しても、女子大生は黙ったままだ。



むらむらと負の感情がわいてきた。

人形のように愛らしい顔をして、どれほど破廉恥なことをしてきたのか。
それを全部知っている真波の前で、どうしてこんなに取り澄ましていられるのか。


いや、もちろん真波だって、彼女に恥を知られている。
亮に貫かれてイキまくったことは知らないはずだが、その前の、ショーツに染みをつくってヒイヒイよがっていた事実は知られている。

知られているから、平然としていられない。


「姫川さん――
  桐原くんとの歪な関係、やめた方がいいんじゃなくて」


思いがけず、強い口調になった。

こういう言い方ではだめだ、とわかっていたが、とめられない。



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