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真紅の花嫁
第15章 セピアの記憶
「あなた、わかってる?
あの男に利用されてるだけなのを」
綾香の反応がないため、言うことがどんどんきつくなる。
「彼は姫川の人たちに何か恨みがあって、それであなたを弄んでいるだけなの。
あなたを好きでもなんでもなくて、ただ、ひどい目に合わせてやろうと――」
「どうしてそう、いつも上から目線なんですか」
綾音は途中で真波の言葉を遮った。
こっちを見て、いきなりにっこりと笑う。
ぞっとした。
「わたし、矢崎さんのこと、尊敬してたんですよ。
陽ちゃんの婚約相手ってどんな人だろうって思ったら、すごく素敵な人で。
外見だけじゃなくて、知識は豊富で仕事は出来る。
いろいろ親切に教えてもくれるし。
美術館の人たちの評判だって、すごいいいじゃないですか。
でも――
わたし、少ししたらわかっちゃいました。
真波さん、最初っからわたしのことバカにしてましたよね」
「そんなこと……」
綾音は強く首を振った。