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真紅の花嫁
第16章 仄白い指
「けれど紫郎が作品を発表したのは、これ一作きり。
その後は中央画壇と全く関係をもたず、どの展覧会にも応募していません。
活動期間はわずかに三年。
ちょうど朝比奈市にいた期間です。
彼の作品は長らく人目に触れないまま、この町の倉庫で眠っていました。
その作品の大部分が、今回、展示されています」
集まった十数人のトーク参加者を見回す。
熱心に耳を傾ける老婦人、
腕を組んで首を傾げる青年、
互いをつつき合ってニヤついているカップルもいた。
この中の誰一人、真波がスカートの下に何も穿かず、卑猥なおもちゃを装着していることに気がついていないのだ。
どきっとした。
展示室の入口に亮の姿が見えた。
片手をズボンのポケットに入れてニヤニヤ笑っている。
真波は周りの人々に気づかれないよう、眼だけで「やめて」と頼んだ。
「では次に進みましょう」
一歩、足を出した瞬間、ローターが震えた。