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真紅の花嫁
第1章 深緑の美術館
真波がその場にかたまっているうちに、亮の笑みは、たちまち、ふだんの無邪気なものになった。
まるで映画の特殊撮影みたいな変化。
夢でも見た気になる。
「じゃあ、ぼく、こっちの絵を会議室に運んどきますねー」
確認が終わったタトウ箱を抱え、軽い足取りで収蔵庫を去っていく。
細身の体躯に生成りのシャツと濃いグレーのチノパン。
後ろ姿でもスタイルの良さが際立っていた。
来週からの常設展の入れ替えに合わせて、展示品のチェックをしているところだった。
その準備のため、今日と明日、会議室を押さえてあった。
「……なんなの、あれ?」
真波は不穏なざわめきを胸に、アルバイト高校生のほっそりとした背中を見送った。