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真紅の花嫁
第1章 深緑の美術館
「楽しみだねえ。
〈朝山紫郎と日本の幻想絵画展〉。
やっと見られるんだねえ」
田辺がしみじみと言う。
地元出身の洋画家、朝山紫郎を中心にした展示会は、三年越しの企画だった。
旧家の蔵で見つかった紫郎の作品十数点点をもとに、〈日本の幻想絵画の系譜〉というテーマを打ち出し、ようやく実現することになったのだ。
「そうですね。長い道のりでした」
「はは。
矢崎さんにとっちゃあ、縁結びでもあったしね。
どう。そっちのほうの準備は進んでるの?」
「ええ、まあ」
苦笑いで受け流す。
三ヶ月後に迫った真波の結婚のことをいっているのだ。
正直、企画展の開催と重なってきびしいが、真波の都合だけではどうしようもない事情があった。