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団地妻、桃香の青春とは……
第5章 マッサージ店
セールスマンの男性から渡されたメモには、五反田の住所が記されていた。
桃香と友美は午前中に家を出て、横須賀線の品川駅で乗り換え五反田まで行き、駅前の喫茶店でランチを済ませた。
駅から10分ほどぶらぶら歩くと、道路に面して7階建てのビルがあり、1階の入口にマッサージ店の看板が出ていた。
ドアを開けて入るとカウンターがあり、受付の若い女性に予約した旨を伝えた。
1階と2階はエステサロンになっており、カウンター越しの通路の両サイドには、壁面で仕切られたプライベートルームが並んでいる。
白色灯に照らされた空間から、アロマの香りが受付にまで溢れて匂い立っている。
案内されてエレベーターで3階まで上がると、正面に通路があるだけの殺風景なフロアで、人の気配を感じさせない深閑さだった。
廊下を歩いて奥の部屋へと通された。
二人が通された部屋にはロッカーと3人掛けのソファーがあるだけで窓は無く、あたかも銭湯の脱衣場のような雰囲気だった。
受付の女性が出て行くと、部屋の周囲を見渡して友美がつぶやく。
「このフロアーって、静か過ぎてさあ、エステって雰囲気じゃないよね。人の気配がまるで無いよ」
「そういえば、あのセールスマンは、極秘の情報だから内密にお願いしますって言ってたわね。表向きはマッサージ店だから、秘密会員として紹介しますって言ったわ。普通にエステに通うお客には、知られたくない理由があるのよ」
「なんだか、きな臭いなあ。秘密の組織に覚せい剤を売りつけられるとか……」
「まさか。ここは、どう見たってエステだわよ」
「だから、表向きは、でしょう……」
「でもね、あのセールスマンの男性は、人を騙すような悪人とは思えなかったけどなあ」
「うーーん」
二人がソファーに腰を下ろすと、突然、天井の換気扇が回り始めて、ローズウッドの甘い香りが漂い始めた。同時に、スピーカーも見当たらないのに、アメージング・グレイスの歌声が流れ始めた。