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団地妻、桃香の青春とは……
第5章 マッサージ店

5分ほど待たされると、セラピストのユニフォームと思われる半袖のジャケットを羽織った女性が、先ほどの入口から現れた。

「お待たせ致しました。準備が整いましたので、次の部屋にご案内いたしますが、その前に、ここで衣服を脱いで頂きます」

「えっ? 衣服を……脱ぐ?」
びっくりして友美が問い返す。

「はい。これから皆様をご案内する部屋は、アロマセラピーやメンタルケアを施すような、リラクゼーションサロンではありません。新たな肉体を創造するための、研修と修練の場になります。世俗不浄の邪念を払い、心身ともに集中して頂かなければなりません。うわべを繕うだけの衣服は、修練の妨げとなるのです。下着はそのままで結構です。脱いだ衣服と貴重品は、そちらのロッカーに入れて、ダイヤルキーでロックして下さい」

桃香と友美は顔を見合わせ、不承不承にうなずき合って、ロッカーを開いて脱いだ衣服を放り込む。

二人が下着姿になったところで、セラピストの女性は入口とは反対側の扉を開いて、隣りの部屋に入るようにと促される。

部屋には長テーブルとイスが3列に並べられ、正面の壇上にはホワイトボードとテレビモニターが据えられている。
最初の部屋で聞こえた歌声は、こちらの部屋のスピーカーから流れてきたようだ。

「こちらが研修室になります。間もなく先生がお見えになりますので、座ってお待ちください。テーブルのペットボトルのお茶は、自由にお飲みください」

女性は慇懃に一礼をして、部屋から出て行った。

「こんな姿にされちゃったら、もう逃げ出せないよ、桃香さん」
「そうね、エステだと思えば、いいんじゃないの?」

「だけどあの女、リラクゼーションサロンじゃありませんって断言したよ」

「まあね、厳しい試練だとかセールスマンの男性は言ってたけど。ともかく、友ちゃんと一緒で良かったよ。一人じゃちょっと、不安な雰囲気だものね」

「そうだよ。ヤバそうな研修だったら、すぐに帰ろうね」


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