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団地妻、桃香の青春とは……
第6章 桃香の青春

実現するなんて考えてもいなかった夢物語が、突然の成り行きで現実になった。
さっそくドライブの行く先を考えなければと、桃香は思って気持ちが浮き立つ。
寝室の中でだけ許される逢引きだと断念していた。
ところが今、太陽の光を浴びて堂々と、愛を交わせるチャンスに恵まれた。
恋の女神が、私に与えてくれた運命だから、青春へと続く道しるべを探そう。
青春の剣を振りかざして、真紅の血を流せる場所を探そう。
禁断の恋だろうが、淫乱だろうが、どうでも良い。
青春を完成させるための、邪恋の炎が燃え上がったのだ。
愛しい少年を助手席に乗せて、はにかみながら青春を語りつつドライブを楽しむ。
車窓に爽やかな風を受け流しながら、熟した女がハンドルを操る。
桃香の心は淫靡に浮き浮きと、愛をささやき、口づけのできる場所はどこだろうかと思案する。
太平洋の海風を頬に受けながら、房総の海岸沿いを疾駆するなんてどうかしら。
九十九里の海岸で焼きハマグリを頬張り、海を見ながらキッスをする。
私たちはカモメになって、青い空を飛翔する。
それとも高速道路をぶっ飛ばし、私はカッコよくスカーフをなびかせて、富士山を眺めながら五湖巡りというのはどうだろうか。
芦ノ湖のほとりでじゃれ合いながら、湖畔のレストランで恋を語るとか。
いやいや、どちらも遠過ぎる。
ドライブは目的ではなくて、手段に過ぎない。
恋を語るだけでは済まされないのだ。
愛を交わす時間が必要だから。
桃香の胸はドギマギしながら、スマホでラブホの場所を検索してみる。
そしていよいよ、約束の祭日がやってきた。
期待通りに雲ひとつ無い、紺碧にきらめく青春の空だった。
桃香の心はルンルンと、レンタカーのハンドルを軽やかに握り締め、蒼汰を迎えに約束の場所へと向かう。

