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団地妻、桃香の青春とは……
第1章 愛のセールスマン

桃香は田辺夫人から常々愚痴を聞かされていた。
月に1回か2回のセックスをしても、亭主は中折れして果ててしまう。かといって、若い男と遊べるだけの器量はないし、若さもない。だから、いつも悶々として不満がつのると。

そんな田辺夫人がコンドームを必要とするとは思えないのに、セールスマンを紹介してけしかけたのはなぜか。

コンドームを買ったところで田辺夫人は、使い切れずに押し入れに仕舞いこんだまま、カビを生やしてしまうかもしれない。それでも田辺夫人は、10年分のコンドームを買わされるかもしれない。
だけど、桃香に罪悪感など微塵もなかった。むしろ、感謝して欲しいとさえ思っている。

ホストクラブで豪遊して、頑健な男をお持ち帰りして、失神するほど抱かれる夢を見たいと、田辺夫人は冗談めかして言っていた。
死ぬまで叶うことのない、絶望的な夢だと嘆息していた。

オスに見捨てられて老いていくハイエナのメスみたいに、苛立つ日々はやるせなく辛かろう。たとえ一時でも思う存分の愛撫を受けて、腰が抜けるほどのセックスを堪能できれば幸せだろう。ホストクラブで遊べたと思えば、コンドームの費用なんか惜しくはないはずだから。

夢を見させてあげますよと、桃香は気を利かせてセールスマンをけしかけたのだ。

「田辺さんがお待ちしてますわ。この下の階ですから、よろしくね」

「はい、ありがとうございます」

セールスマンに桃香の思惑など分かるはずもなく、満面の笑顔で揉み手をしている。


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