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団地妻、桃香の青春とは……
第2章 桃香と友美

友美は近くの食品工場でアルバイトをしていたのだが、年増の先輩に逆らって、折り合いがつかずに喧嘩して辞めてしまった。時給の安さも気に入らなかった。
むしゃくしゃしてベランダに出てあくびをしていたら、隣りのフェンスから桃香が顔を覗かせて声をかけてきた。
「ちょっと相談があるんだけど、紅茶でも飲みに来ない?」
「うん、行く」
友美が玄関を入って上がると、桃香はリビングのソファーに座って雑誌を広げていた。
友美がリビングに顔を見せると桃香は立ち上がり、キッチンへ入って湯沸かしポットのスイッチを入れた。
「今、紅茶をいれてあげるから、そのページ、見ててよ」
「えっ、なあに?」
友美はソファーに腰を下ろし、テーブルの上に広げられた雑誌の写真を覗き込む。
コップにティーバッグを放り込み、スティックシュガーを弄びながら桃香が問いかける。
「あい変わらず、健介くんは忙しいの?」
「昨日も帰って来なかったよ。追い込みの仕事で深夜残業とかでさあ、会社の近くのカプセルホテルに泊まったよ」
「ふーん、健介くんも大変だけど、友ちゃんも鬱憤が溜ってるんじゃないの?」
「イラついちゃうよ。サービス残業ばかりでさあ、会社に殴り込んで行ってやろうかと思うよ」
「まあまあ、健介くんはしっかり稼いでくれてるんだから仕方ないわよ。その記事、どう思う?」
「どうって?」
「温泉に入って、ストレスを発散させて来ないかってことよ。都会から離れて、山の中の温泉宿に泊まって、鋭気を養いたいと思わない?」
「思う……。行きたい」
「じゃあ、予約するわよ」
「うん、いいよ」
桃香はさっそく、温泉宿に2名で1室の予約を入れた。

