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団地妻、桃香の青春とは……
第4章 蒼汰くん

紅茶を飲み干して、蒼汰は帰って行った。
蒼汰とは、今日初めて出会った気がしない。
桃香は一人になって、恋に萌え始めている自分に気付いて胸が疼いた。
隣の町に住む高校生の従兄に再会して、初めて恋をした女学生のように、はるか遠い青春の日々がほのぼのとよみがえる。
32歳のおばさんが、18歳の高校生にと考えれば壁を感じるが、男と女の関係だと承服すれば制約はない。
それよりも、30路をとっくに過ぎて、32歳という年齢に焦りを感じる。
私からどんどん青春が遠ざかって行く。
特急の夜行列車に乗り合わせたように、青春が車窓をかすめて過ぎ去っていく。
あのころ私は、乙女だった……はずだ。
今、その心を取り戻そうと、運命の舵を切ろうとしているのか。
まやかしの青春に向けて、どのように舵を切れば正しいのだろうか……。
そんなこと、分からない。
分からなくても、いい……。

