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縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第2章 サディスト
付き合うって何だ。お姫様にでもなりたくて俺を従者にしたいのか。
安井は、俺に
「好きじゃない男子にずっとつきまとわれて、恐いから彼氏になったフリをしてほしい」と言ってきたのだ。
フリで一緒に歩いているだけだ。最初っから、彼でも彼女でもない。『つきまとわれる』が噓だったことも買い物につきあったとき、すぐに判った。
「仮に安井の言うとおりだとする。スズはそれでも俺と付き合いたいのか。妄想で作った俺の人物像なら、価値観ってやつ?それがすぐに合わなくなるぜ」
「私、リョウが思ってるより、もう少し賢いんだな。安井さんのことはリョウの方が正しいこと知ってるから無視。私は自分の目を信じる」
「人を見る目ってさ、思い込みってフィルターで色が変わるんだぜ。知ってたか」
「安井さんはリョウを自分のリョウにしたかったみたい。でも私はちがう。私はリョウのための私でいたいと思った」
「マジか。俺のどこにそんな価値がある」
「マジだよ。だからどんなリョウでも平気」
スズはかすれた声で、
「私だって勉強のことだけじゃなくて、一緒に楽しいことしたいよ。それに……私にだって性欲はあるんだもの。エッチに興味が無い訳じゃない」
そう言ったスズの瞳の奥で、何かが燃えたような気がした。
「2年になったとき、あることをしていたらね、いきなりリョウの顔が浮かんできたのよ。それから何かにつけて浮かんできて、何故好きになったのか正直に言うと判らないの。だから何故かという質問には答えられない」
スズが言った『あること』が何かは簡単に想像できる。
「でも一番の事は、リョウに何かして上げたいの……。違う。何かさせてほしいんだな」
明るい声で軽やかにそういうスズが、俺には涙を溜めて縋りついてくるように感じられた。
ヤバイ