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縛師-Ⅰ-告られてから『ごっこ』の終わりまで
第1章 告られた
その女子は、俺と別れた後で、あること無いこと吹きまくっていたが、俺はそれを弁明していない。
そんなものは実際の俺を知ったらカスみたいなものだ。
まあ、俺が俺を説明するより、そいつが振り撒く毒のほうが皆には真実味があるだろうし「あいつってすごいサドでー」というのは当たっているから放っておいた。人と距離をおきたい俺には一石二鳥だ。
「知ってるよ。それ聞いたからリョウに興味を持ったのよね。でもよく見てると全然その子が言ってることと違うじゃん。リョウって本当は賢いし何でも出来るのにさ、目立たないようにそれを隠してて、隠しきれないリョウがチラチラしてるよ」
「へえ。スズにはそのチラチラが見えるんだ」
「大抵の男子はさ、女子から告られると舞い上がってカッコつけるし、女子に嫌われたくないから、エサ貰う犬みたいになるんだよね。だから女子に陰口言われても平気で笑ってるのは根性無しか、メッチャ強いかのどちらかなの。リョウは後の方だからカッコいいなと思った」
スズは自分の言葉に納得するように頷き、
「じゃあ、つきあってというのは保留ってことで、どうすれば私が彼女になれるのか教えてよ」
「俺はSだって言っただろ。だから俺の彼女はMでってことだろ」
スズは俺に寄り添って歩きながら小さな声で言った。
「リョウのSがどんなのかは知らないけど、私はMの気があると思う」
スタバのテーブルで、試験の答え合わせと出題予想をしたあと、映画に行く者、買い物に行く者とそれぞれに別れたので俺とスズがそのまま残った。
「リョウがさっき言ってた子。1組の安井さんだよね」
「ああ。スズは何て聞いた?」
「えーとね、『あいつサドでー、買い物しても荷物持ってくれないし、何か食べてもワリカンだし、映画の趣味違うし、一緒に居て全然楽しくない』って言ってた」
本当はもっと色々なことを言っていたはずだ。テーブルマナーのこととか、キスをしたくなる雰囲気も作れないとか、変態だとか……。
(このときの変態は、女性に興味を示さないという意味の『変態』だったようだ)
俺はそれを周りから聞いたとき、可笑しくなって声を上げて笑ってしまった。