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RINZIN ー隣人ー
第3章 第二話
 涼太が差し出したブリーフを受け取る北野。
 すると、とくに気にする素振りもなく、涼太の目の前でそれを穿こうとしはじめた。

 涼太はあわててうしろに振り向き、北野から視線を逸らす。

 (あーもうなんなんだこいつ! なんで俺がいちいち気ぃ遣わなきゃいけねぇんだよ! 犯すぞこのやろう)

 「──コウタケさんのパンツ、すっごくおっきいー。ブカブカだけど、でも楽チンでいいな……へへ♡」

 (ヘヘ、じゃねーよ……ったく)

 「まぁ……俺はとくに下半身は太めなほうだからさ。野球やってたのもあるけど。そのサイズでもちょっと窮屈に感じるくらいで」
 
 「そうなの!? でもたしかに。コウタケさん背も高いしおっきいですよね。いいなぁ……」

 「ん? いいなぁって……?」

 「あ、うん……。私、小さいころはずっと男の子になりたいと思ってたから。兄弟も私以外は男しかいないし……」

 「へ、へぇ……そうなんだ」

 メスの武器をこれでもかと全身に装備しているような北野が「男の子になりたかった」というのも意外である。しかし同時に涼太は妙に納得もしていた。この北野の無防備さは、おそらく男兄弟の中で育まれてきたものなのだろう。

 「まぁでも、男もいろいろ大変っすよ? 女に生まれたほうが絶対得だって。それに北野さんくらいかわいかったら人生余裕っしょ」

 無意識にこぼれた、女への蔑視のようなもの──本人には自覚がないようだが、これが涼太の女に対する基本的なスタンス、潜在意識なのだろう。

 またこのとき涼太は昨夜からの一連の出来事にいよいよイラ立ちがピークに達していたのかもしれない。もし仮に男である自分が他人の家の前で高熱を出して倒れていようが、部屋にあげて一晩泊まらせてくれる女などこの世に存在しないだろう──そんな表層的な男女の非対称性にかこつけて、そのあてつけを北野へと向けてしまうのだ。

 要するに涼太は、ちょっといじけていたのである。
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