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RINZIN ー隣人ー
第3章 第二話
 「──コウタケさん、下の名前聞いてもいいですか?」

 「あ? うん……。涼太だけど。北野さんは……?」

 「私は芽生《めい》。リョウタさん……うん、なんかリョウタって感じするかも! どんな字書くの?」

 「なんだよそれ……。えっと漢字は『涼しい太い!』。そっちは?」

 「涼しい太い(笑)えっと私は、『芽吹く生きる!』かな?」

 「へぇ~、なんかカッケーじゃん」

 「そ、そうかな……?」

 「うん。少なくとも涼しい太い! よりはマシ」

 「あははっ、そんなことないよ!」

 「……それでは、北野芽生さん!」

 「な、なに……?」
 
 「そろそろ……帰ってもらってもいいすか?」

 「あ……はい……そう……ですよね」

 涼太の一言によって、それまでの笑顔が芽生の顔から消える。

 もう熱も下がった、シャワーも着替えも貸した、隣人としての役目はじゅうぶんに果たしたはず──涼太そう自分に言い聞かせた。もちろん鍵を紛失しているためすぐには部屋に入れないこともわかっている。しかしそれがなんだというのだ。これからどうするかまでは涼太の知ったことではない。相手が子どもならいざ知らず、若いとはいえひとり暮らしをしている大人なのだから、そのくらいは芽生自身で解決すべきである。

 もっとも、涼太が芽生になにかしてやる義理などないのだ。手土産に入浴剤はもらったが、それはあくまで引越しのあいさつの代わりである。涼太にとってこれ以上はなんのメリットもない、はずなのだが──。

 (なんだよそんな顔すんなや……なんか俺が悪いみてぇじゃん。大体なんで俺がこいつに構ってやんなきゃなんねぇんだよ。見返りにヤラせてくれるわけでもねぇんだし。それこそ膣内射精《なかだし》させてる彼氏だかなんだか知らんがそいつに頼ればいいだろうがよ……)

 などと思うも、途端に落ち込んだ様子の芽生を見ているとどうにも後味の悪さを感じてしまう。
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