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RINZIN ー隣人ー
第3章 第二話
 鍵の交換費用が思っていた以上に高額だったのだろうか、芽生は思いつめたような表情になる。たしかに出費としては痛手であろうが、それにしても──芽生のその様子にどことなく違和感を覚える涼太。

 「北野さん、いくつよ? もしかして学生とか?」

 「い、いえ……。学生じゃないです。歳は十九……」

 「マジか。まだ十代だったんか……。まぁ若いもんな。てことは社会人? 仕事はなにしてんの?」

 「仕事は……はい。一応……してるというか……してます」

 あまり答えたくないのだろうか。涼太もべつにそこまでして聞きたいわけではなかったが、なにやら事情がありそうな雰囲気だけは伝わってくる。

 「いやその……さ。女の子がこのアパート住むの、ちょっとめずらしいなって思ってて。ここまぁまぁ広いし綺麗なわりに家賃は相場より安いけど、セキュリティもないし駅も遠いし……ちょっと通りからも奥まってるから夜なんか結構真っ暗で物騒じゃん? だから不思議だな、とは思ってたんだけど」

 「は、はい……。私も気にはなってたんですけど、いろいろあって……」

 「ま、まぁいいんだけどさ。とりあえず気をつけなよ? あと、やっぱお金はかかるけど鍵は交換したほうがいいと思う」

 「……そうします。ほんとになにからなにまで……あの、」

 「ん? なに? まだなにかあんの……?」
 
 「い、いえ……。涼太さん、やさしいですね」

 「は? い、いや……べつに俺は……その……」

 「やさしいです。私なんかにつきあってくれて。涼太さんがおとなりさんでよかった」

 「そ、そう? あ、てか入浴剤ありがとね。さっそく使わせてもらってるよ」
 
 「あ……はい。さっきお風呂場に置いてあるの見ました。使ってくれたんだなぁって。うれしかったです」

 (なんだ……なんなんだ、この感じ……。調子狂うというかなんというか……)
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