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RINZIN ー隣人ー
第10章 第九話
それから数時間。
夕方に目覚めた芽生はシャワーを浴び、出かける準備をする。
「あー下地そろそろ買ってこなきゃ……」
すっぴんの素肌をパックで潤し、慣れた手つきでメイクをしていく。
ブルーベースの肌によく馴染むピンクを基調としたアイカラーで薄く彩られた目もと。長いまつ毛はロングタイプのマスカラできれいにセパレートされ、嫌味のない目ヂカラを演出する。
メイクを終えると洗面台へ移動し、タオルドライの濡れ髪にオイルを馴染ませドライヤーでブロー。ローズの華やかな香りがするその髪をヘアアイロンで整えると、あくまで盛りすぎない、しかし徹底的に男ウケを意識した「あざとカワイイ」姿が見事に仕上がっていた。
「……ふう、まぁこんな感じでいっか」
そして芽生は唯一持っている例の服に着替えると、バッグに財布とスマホを入れて部屋を出て行く。
それからおよそ一時間後──芽生はとある男と二人きりで居酒屋の個室に居た。
「──じゃあ今夜は引越し祝い? ということで。乾杯!」
「かんぱーい!」
芽生の向かいに座り杯を交わすその男、飯島浩之《いいじまひろゆき》、五十二才。会社経営者である。
「プハーッ! いやぁ……芽生ちゃん相変わらず……いいね。ちょっと間が空いちゃったから余計に……会いたかったよ」
「えへへ♡ 私も『パパ』に会いたかった~」
「こら、いくら個室だからって外で『パパ』はやめなさい。なんてね。冗談だよ」
「あ、ごめんなさいっ……つい。てへへ……」
芽生は飯島のことを「パパ」と呼んだが、もちろん血縁のある父親ではない。
そう──飯島は芽生が「パパ活」で知り合ったうちの一人。そのなかでもいわゆる「太パパ」の部類である。
夕方に目覚めた芽生はシャワーを浴び、出かける準備をする。
「あー下地そろそろ買ってこなきゃ……」
すっぴんの素肌をパックで潤し、慣れた手つきでメイクをしていく。
ブルーベースの肌によく馴染むピンクを基調としたアイカラーで薄く彩られた目もと。長いまつ毛はロングタイプのマスカラできれいにセパレートされ、嫌味のない目ヂカラを演出する。
メイクを終えると洗面台へ移動し、タオルドライの濡れ髪にオイルを馴染ませドライヤーでブロー。ローズの華やかな香りがするその髪をヘアアイロンで整えると、あくまで盛りすぎない、しかし徹底的に男ウケを意識した「あざとカワイイ」姿が見事に仕上がっていた。
「……ふう、まぁこんな感じでいっか」
そして芽生は唯一持っている例の服に着替えると、バッグに財布とスマホを入れて部屋を出て行く。
それからおよそ一時間後──芽生はとある男と二人きりで居酒屋の個室に居た。
「──じゃあ今夜は引越し祝い? ということで。乾杯!」
「かんぱーい!」
芽生の向かいに座り杯を交わすその男、飯島浩之《いいじまひろゆき》、五十二才。会社経営者である。
「プハーッ! いやぁ……芽生ちゃん相変わらず……いいね。ちょっと間が空いちゃったから余計に……会いたかったよ」
「えへへ♡ 私も『パパ』に会いたかった~」
「こら、いくら個室だからって外で『パパ』はやめなさい。なんてね。冗談だよ」
「あ、ごめんなさいっ……つい。てへへ……」
芽生は飯島のことを「パパ」と呼んだが、もちろん血縁のある父親ではない。
そう──飯島は芽生が「パパ活」で知り合ったうちの一人。そのなかでもいわゆる「太パパ」の部類である。