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RINZIN ー隣人ー
第11章 第十話
 涼太は言葉のナイフを止められなかった。これ以上はいけない、これ以上こんなことを言ってもなんの意味もないとわかっていても、芽生への人格否定が次々に口をついて出てきてしまう。

 当然、感情のベースにあるのは嫉妬である。告白した手前、男としてのプライドが傷つけられたとも感じてもいるのだろう。わざわざ自ら「ただのおとなりさん」であると前置きしておきながら、それでもなお芽生の行動を咎めずにはいられない──涼太はそんなアンビバレントな感情をコントロールすることができなかった。

 「……なんか言えよ」
 「いい。涼くんの言うとおりだよね。だから言ったじゃん。私のことを知ったら嫌いになるよ、って。それが今ほんとにそうなっただけ」
 「チッ、開き直りかよ……」
 「もう私のこと、きらい?」
 「……ああ」
 「顔も見たくない?」
 「……そだな」
 「じゃあなんで来ていいって言ってくれたの……?」
 「……」
 「私、どうしたら許してもらえるかな……」
 「は? べ、べつに許すとか許さないじゃ……ねぇだろ。俺には関係ねぇし……」
 「涼くん……」
 「なんだよ──」

 すると次の瞬間、芽生は涼太の懐に飛び込んだ。

 「お、おいっ……やめろって」
 「やだ」
 「……クソッ。ったくなんなんだよお前は」
 「涼くんだけなの」
 「あ? なにがだよ」
 「私がしたくてするのは涼くんだけ」
 「そ、そんなもん……今さら信じられるかよ……」
 「お金もらわなくてもするのは涼くんだけなの」
 「え……?」

 唐突にはじまった芽生の告白。その意味深な言葉に、涼太は少し冷静さを取り戻す。
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