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第25章 ２日目・朝１　朝凪の挨拶

「鼻歌なんか歌って、
いいことありました〜？」
ヒロシの言い方が自然には受け止められなかった。
普通に笑っていただけかもしれないけれど
やはり身構えてしまう。

綾子には、ヒロシの感情はつかめなかった。
昨日の帰り際にまた綾子に告白した時の
まっすぐな純情さも感じられる。
けれど、ちょっと意地悪な言い方にも
聞こえてしまう。
「いいこと」が何を意味しているのかは、
綾子が一番よく知っているからだ。

おもわず後ずさりしてしまう。
「そんな身構えないでくださいよ。
オレ、何か綾子さんを困らせることしてます？」
「そんなことはないけど」
「昨日は、いろいろと、ありがとうございました！」

一見ハキハキとしているけれど、
ところどころの意味ありげなものの言い方が
どうも気になってしまう。
「いいこと」「いろいろ」
まあ、本当のことではあるけれど。

できるだけ普通にやり過ごしたい。
「アタシ、今日、学校行かなきゃなの。
ごめんね〜、ちょっと急いでるから」
「そんなことわかってますよ〜。
聞こえてましたから、、、」

「パパさんは、夕方に戻ってくるけど、
綾子さんは、ちょっと遅くなるって。
あ、夏音ちゃんは早起きのようですね〜」
「ねえ、お願いだから、そういうの
もう聞かないで、、」

夫婦や家族の普通の会話もずっと聞かれていると思うと
さすがに怖くなってくる。
笑顔の下に何を隠しているのだろう。

でも気を悪くされて、どこかで豹変されたら、、
そう思うと、むげにすることもできない。
それくらいヒロシには、たくさんの秘密を知られすぎている。