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第112章 深夜8　天使と悪魔の境界線

優しかったはずの
ヒロシがだんだん荒々しくなってくる。


夫にディスられているのを
隣の部屋で聞いて、
怖い顔になってしまったのと
同じ雰囲気が漂い出していた。


助けてくれたはずなのに、
その正体は、
悪魔だった。


もしかしたらこんなヒロシの声も
タケトにはもう、
聞こえてしまっているのかもしれない。
あの少しだけ開いた
ドアの隙間から聞こえる物音に
聞き耳を立てているに違いない。


そもそも、
ヒロシに、
家の中に入って玄関にずっと居て、
というお願いは、
無理なことだったのだ。


ヒロシにしてみれば
玄関から見えるドアの
その向こうから、
聞き覚えのある
妖しげな綾子の声が
ずっと聞こえ続けている。


しかも一人ではないことも
すぐにわかるだろう。
管理人はさっき飛び出して行ったのに
いったい誰といるのか？


綾子とすでに
ただならぬ関係になりつつある
タケトがそんな声が聞こえてきて、
気にならないわけがないのだ。


玄関にじっとしていてほしいという
綾子の一縷の望みは
簡単に霧消してしまった。


もう、警官が来るとか来ないとか
そんなことは頭から
飛んでしまった。