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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「細道をしばらく進んだ先に洞窟があって、そこから獣の唸り声が聞こえたんです。止めたんですけど、ドゥム副団長と他の騎士達が入ってしまったんです」
「まったく、困った人達だ……。では皆、そちらに行こうか」
「あ、あの!」
 ドゥム派の騎士は、慌てて声を張り上げる。彼の行動に、カミリアはますます不審に思うが、証拠もないのに疑ってはいけないと自分に言い聞かせた。

「どうした?」
「向こうの道は崖沿いでして、副団長達と歩いた時に少し崩れました。それに、人ひとりがやっと通れるくらい細い道ですので、えっと……」
「つまり、大人数で行かないほうがいいと?」
 しどろもどろに話す騎士に少し呆れ、結論をカミリアが代わりに言うと、彼は何度も大きく頷いた。
「は、はいっ! そういうことです! なので、団長ひとりで向かわれたほうがいいかと……」
「分かった、私ひとりで行こう」
「ケリー騎士団長!」
 ハーディは声を荒げ、伝達に来た騎士を睨みつける。彼女が言いたいことを察したカミリアは、落ち着かせようと微笑みかける。

「大丈夫だ、ディアス。君の言いたいことは分かるが、あれでもモリス副団長も、彼について行った騎士達も、大事な部下だ。彼らを見捨てるわけにはいかないだろう?」
「ですが……!」
 食い下がるハーディの肩に手を置くと、これ以上何を言っても無駄だと察したのか、口を噤んでうつむく。

「ディアス、君が心配してくれるのはとても嬉しい。君の忠告を胸に、慎重に行動する。だから。君は彼らと一緒に、先に山を降りてくれ。必ず、全員連れて帰るから」
「……分かりました。どうか、ご無事で」
「あぁ、行ってくる。君、案内を頼めるか?」
「もちろんです!」
 騎士は敬礼すると、崖沿いの道へ向かう。カミリアはその後をついて行く。

「何もなければいいんだけど……」
「……」
 ハーディは不安げな目でカミリアの背中を見つめる。その隣で、ラウルは険しい目でふたりを見つめる。
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