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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第4章 フェガリ
(また初心だって笑われてしまいそう)
耳元に、ラウルの唇が近づけられるのを、気配で感じる。からかわれることを覚悟して、言い返す言葉を必死で考える。
「他の男と踊った時に、そんな素振りを見せてはいけないよ」
「え?」
独占欲とも取れる囁きに、胸が高鳴る。驚いてラウルを見ると、彼は見たことない、妖しい笑みを浮かべていた。
「まぁ、他の男と踊らせる気はないんだけどね」
どういう意味なのか聞きたかったが、聞く勇気がない。聞いてしまったら、後戻りできない。そんな気がして口を噤む。
カミリアはラウルの妖艶な笑みに魅了され、曲が終わるまで見つめ合いながら踊った。
ダンスの練習は昼食の時間になるまで続いた。ふたりはそれぞれの部屋で着替えをすると、食堂へ行く。
カミリアの後ろにはいつもどおり、ルナとサージュがいるが、ラウルの後ろにいるはずのオネストがいない。
「オネストは?」
「すぐに来ると思うよ」
ラウルは気にする素振りすら見せず、食事を始めた。大事な執事がいないのにそれでいいのかと言いたいところだが、自分が口出しをしていいことではないと思い、カミリアも渋々食事を始める。
前菜を食べ終える頃、オネストはようやく食堂に来た。いつも不機嫌そうな顔をしているが、今日はいつにも増して不機嫌そうだ。
「食事中申し訳ありません。午後の公務ですが、お休みになられてはいかがですか? 回復したとはいえ、病み上がりなのですから」
「いいや、絶対に行くよ」
穏やかな声音で言うが、強い眼光から、強い意志が感じられる。
「いったいどんな公務なの?」
「畑仕事ですよ」
オネストは苦虫を噛み潰したような顔で答える。何故、国王最有力候補であるマルティネス公爵ともあろう人物が、公務で畑仕事をするのか、理解できない。確かにこの国は農業を大事にしているが、役に立たないと判断された貴族や囚人がするのだから、現役貴族がする必要もない。それがカミリアの見解だ。
耳元に、ラウルの唇が近づけられるのを、気配で感じる。からかわれることを覚悟して、言い返す言葉を必死で考える。
「他の男と踊った時に、そんな素振りを見せてはいけないよ」
「え?」
独占欲とも取れる囁きに、胸が高鳴る。驚いてラウルを見ると、彼は見たことない、妖しい笑みを浮かべていた。
「まぁ、他の男と踊らせる気はないんだけどね」
どういう意味なのか聞きたかったが、聞く勇気がない。聞いてしまったら、後戻りできない。そんな気がして口を噤む。
カミリアはラウルの妖艶な笑みに魅了され、曲が終わるまで見つめ合いながら踊った。
ダンスの練習は昼食の時間になるまで続いた。ふたりはそれぞれの部屋で着替えをすると、食堂へ行く。
カミリアの後ろにはいつもどおり、ルナとサージュがいるが、ラウルの後ろにいるはずのオネストがいない。
「オネストは?」
「すぐに来ると思うよ」
ラウルは気にする素振りすら見せず、食事を始めた。大事な執事がいないのにそれでいいのかと言いたいところだが、自分が口出しをしていいことではないと思い、カミリアも渋々食事を始める。
前菜を食べ終える頃、オネストはようやく食堂に来た。いつも不機嫌そうな顔をしているが、今日はいつにも増して不機嫌そうだ。
「食事中申し訳ありません。午後の公務ですが、お休みになられてはいかがですか? 回復したとはいえ、病み上がりなのですから」
「いいや、絶対に行くよ」
穏やかな声音で言うが、強い眼光から、強い意志が感じられる。
「いったいどんな公務なの?」
「畑仕事ですよ」
オネストは苦虫を噛み潰したような顔で答える。何故、国王最有力候補であるマルティネス公爵ともあろう人物が、公務で畑仕事をするのか、理解できない。確かにこの国は農業を大事にしているが、役に立たないと判断された貴族や囚人がするのだから、現役貴族がする必要もない。それがカミリアの見解だ。