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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
(もしかして、ハーディ……?)
 カミリアは心優しい親友の顔を思い浮かべる。
「大勢でみっともないですよ、副団長さん」
 優しい声は若い男の声だ。聞いたことのある声だが、誰かは分からない。

「邪魔すんな、クソガキ!」
 ドゥムがその人物に斬りかかると、他の騎士達も斬りかかる。だが、彼らの気合は、すぐに悲鳴に変わった。
「僕はクソガキではありません」
 数人の騎士が倒れ、カミリアにもようやく助っ人の顔が見えた。返り血を浴びたラウルが、にっこり微笑んでいる。

「どうして……」
「このクソガキ!」
「やれやれ、それしか言えないんですか?」
 ラウルは肩をすくめてため息をつくと、襲い掛かってくる騎士達を次々と斬り捨て、ドゥムの大剣を軽々と避けた。ドゥムが大剣を引き抜くと、ラウルはクスクス笑う。

「何がおかしい!?」
「太刀筋が見え見え、ひとつひとつの動きが雑。よくそれで副団長になれましたね」
「馬鹿にすんな、ガキィ!!!」
 ドゥムが斜め下から斬り上げるのを最低限の動きで避けると、ラウルは彼の足を斬りつけた。
「ぐあああっ!!!」
 ドゥムは足を抱えながら転げ回る。

「すいません、僕、峰打ち苦手なんですよね。けど、致命傷ではないはずですよ?」
「ひっ……!」
「その程度の痛みで悶えるなんて、騎士失格だと思いますけど」
 ゆったりとした足取りで近づくラウルに、ドゥムは悲鳴を上げて後ずさる。まるで獲物を狩る肉食動物の様なラウルに、カミリアは慌てて駆け寄り、腕を掴んだ。

「殺してはいけない」
「貴女は、この方々に殺されかけたのですよ?」
「助けてくれたことは、感謝する。だが、彼らの罰を裁くのは君ではない。国だ」
 ラウルは訝しげな目でカミリアを見つめた後、剣に付着した血を振り払い、剣を鞘に収めた。その際、その剣がサーベルだということに気づき、峰打ちが苦手と言っていた意味を理解する。
 サーベルは切っ先から3分の1が両刃になっている軍刀で、峰打ちに向いていないのだ。
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