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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「貴女は強いだけではなく、優しいのですね」
 ラウルは小声で言うと、カミリアに身体ごと向き直る。カミリアが聞き返そうとすると、こちらに向かってくる複数の足音が聞こえた。
「ケリー騎士団長!」
 ハーディを先頭に、騎士達が駆け寄ってくる。その中には救護組もいた。騎士達はドゥム達を拘束し、救護組は最低限の手当をする。ハーディだけが、カミリア達のもとへ行く。

「ディアス!? これはいったい……」
「途中でラウルさんがこっちの方に魔物がいるわけがないって言って、駆けていったんです。それで私達も来たら……」
 そう言ってハーディは、拘束されていくドゥム達を横目で見る。
「何故魔物がいないと?」
「数年前、あの洞窟に凶悪な魔物が住んでいたから、ダイナマイトで崩落させたと聞いたことがあったんです。全壊してなかったのは予想外でしたがね」
 ラウルの話を聞き、洞窟の前に立った時に違和感を覚えたことを思い出す。考える前に戦闘になってしまったので違和感の正体が分からなかったが、思い返してみると生き物の気配がなかった。暗闇に慣れきってはいなかったが、岩しか見えなかった気もする。

「ところで騎士団長様、僕の入団を認めてくださいますか?」
「あぁ、もちろんだ。それと、改めて礼を言わせてくれ。君のおかげで助かった、ありがとう」
 ラウルの言い方にはドゥムのようなイヤミったらしさは無く、カミリアは心の底から素直に礼を言うことができた。

 拘束したドゥム達を連れて下山すると、騎士達は罪人となった彼らと共に乗馬する。ドゥム達が乗っていた馬は、1頭はラウルが乗り、残りはカミリアや救護組、罪人を乗馬させていない騎士達が手綱を握った。
 城に着くと、馬達を休ませるために馬小屋へ行く。ドゥム達を下ろして馬を世話係達に引き渡していると、夜のような黒髪をした青年が近づいてくる。

「何事だ?」
「サウラ様……!」
 サウラと呼ばれた青年は、ドゥム達とカミリア、そしてラウルを一瞥する。
 サウラはシャムスの王子だ。黒髪が差別されるこの国で、黒髪を隠さずに国を変えようとしている若き革命者。カミリアが唯一尊敬している男性でもある。
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