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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第6章 6章 光と影
「そんなことが……」
「アムゼル夫人には、後で礼をしないとね。カミリア、このまま任務を続けるかい? アストゥートは捕まったけど、今度は他の男が君を狙うかもしれない。男だけじゃない。女性だって、カミリアを陥れようと何かするかもしれないよ?」
「任務を降りるつもりはないわ」
 カミリアはラウルの目をまっすぐ見つめて答えた。どんな目に遭おうとも、任務を途中放棄するなどありえない。

「そう……。辞めたくなったらいつでも言って。それで君を責めるようなことはしないよ」
「絶対に辞めないわ」
 即答するカミリアに、ラウルは力なく笑う。
「君には敵わないな……。女性にも注意して。アストゥートが捕まったのはまだ公になっていないとはいえ、一部の人間は知っている。ないとは思うけど、そのことが女性達の耳に届いたら、彼女達は全力で君を消しにかかるだろうから」
 カミリアは晩餐会で同室にいた令嬢達や、リュゼから聞いた話を思い出す。結婚は彼女達の人生を大きく左右する一大イベント。
 アストゥートがいなくなったとなれば、ラウルが時期国王なのはほぼ確定と言っていいだろう。彼女達がそれを知れば、女王になるためにカミリアを消そうとする。だからと言ってここで引くわけにはいかない。カミリアにはラウルを守り抜き、彼にフェガリの国王になってもらうという使命がある。

「今度はあんなヘマはしない。絶対にあなたを守ってみせる」
「心強いね。それなら、これを受け取って」
 ラウルはカミリアの手を取ると、ネックレスを握らせた。澄んだ空色の美しい宝玉は、ラウルの瞳にようだ。
「これは?」
「フェガリでは、月には聖なる力が宿っていると言われていてね。だから月光浴をしたり、月光浴をさせた石をお守りにしたりする風習があるんだ。任務中だけでもいい、それを身に着けていてほしいんだ」
 真剣なラウルの眼差しに、トクンと胸が高鳴る。カミリアはネックレスをぎゅっと握った。
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