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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「団長戦、始め!」
 使用人達に連れ戻されたサウラに代わり、ラートが合図を出す。
 先に動いたのはカミリアだ。凄まじい速さで刺突を何度も繰り出し、ラウルを追い詰めていく。ラウルは後退しながらも、最低限の動きで交わし続ける。ラウルの表情に余裕がないように見えるが、彼の動きからして、余裕があるのは明らかだ。
(余裕ないフリをして、気を遣っているつもり?)
 腹が立ち、更に激しく刺突をするも、シャムシールで横に薙ぎ払われてしまった。

「この程度で……!」
 再びレイピアで刺突するも、やはりシャムシールで薙ぎ払われてしまう。カミリアはシャムシールを握った手が振り切る寸前、レイピアを手放してラウルの懐に潜り込む。隠し持っていた短剣をラウルの喉元に突きつけた。
(勝てた……?)
 そう思った矢先に短剣を握った手を強く握られ、痛みのあまり短剣を手放してしまう。

「しまった……!」
「すいません」
 突然のラウルの謝罪に困惑していると、突き飛ばされて仰向けに倒れてしまった。真横にシャムシールを突き立てられる。上から降り注ぐラウルの殺気に、呼吸すらままならない。

「勝者、ラウル!」
 ラートの声に歓声が湧き上がると、ラウルはシャムシールを引き抜き、カミリアに手を差し伸べる。さっきは消え、優男の笑みを浮かべている。
「立てますか?」
「あ、あぁ……」
「失礼」
 ラウルの手を借りて立ち上がると、彼はカミリアに手を伸ばす。優しい手つきで髪や頬に触れられ、戸惑いを覚えながら1歩下がると、ラウルは苦笑する。

「すいません、綺麗な髪や顔に砂埃がついていたものですから。貴女は本当に強いですね。あそこまで本気になったの、久しぶりですよ」
「そう……」
 負けたら悔しさでどうにかなると思っていたが、放心状態だ。

「明日から君が騎士団長だ」
 ラウルの肩に手を置くと、その場から離れようとするも、数人に呼び止められる。
「今日は疲れた。それに、団長室を掃除しておかないといけないからな」
「団長室って?」
「団長、副団長、隊長、副隊長はそれぞれ個室が与えられる。私は今夜から、副団長を使うことになるからな」
 カミリアは簡潔に説明すると、自室に戻っていった。
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