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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「物を持ちすぎないように、気をつけていたつもりなんだがな……」
 ぎっしり詰まった本棚を見て、肩を落とす。幼い頃から勉強好きのカミリアは、暇さえあれば本を読んでいる。特に騎士団に入ってからは、軍学書を買い漁るようになった。
 どう運んでいこうか考えていると、誰かがドアをノックした。

「誰だ?」
「僕、ラウルです。お話というか、お願いがありまして」
「どうぞ」
 正直ラウルの顔は見たくなかったが、断る理由もないので入室を許可する。お願いというのも気になった。
「失礼します」
 ラウルは断りを入れてから部屋に入ると、室内をざっと見回した。本当に失礼な人だと思う。注意しようとすると、ラウルは何かに納得したように頷いた。

「うん、やっぱり……。ケリー団長、部屋なんですけど、副団長室を使わせてもらえませんか?」
「え?」
 願ってもない申し出に、カミリアは目を丸くする。本や荷物を持ち出す苦労が無くなるというものあるが、ドゥムが使っていた部屋は使いたくなかった。シーツや枕などは新品のものを用意されるが、嫌悪していた男が使っていたベッドを使う羽目になる。それに、ドゥムの部屋は煙草臭いのだ。
 副団長から団長になった際、ベッドを自腹で買い替えたり、臭い消しに1ヶ月以上かかった。あんな思いはもうしたくない。
 何より自分が使っていた部屋を、男性が使うことに抵抗がある。ドゥムは副団長になってからしばらくは「女特有の甘ったるい匂いがする」「夢の中のお前は素直でいい女だった」など、セクハラ発言をし続けていた。そのため、ラウルがどれだけ紳士的に振る舞っていても、自分が使っていたベッドを使ってほしくなかった。

「ダメですか?」
「いや、ダメではないが、いいのか? こちらの方が広いし、日当たりもいいんだが……」
「僕にとって、副団長室でも広いくらいですよ。それに、あの部屋が気に入ったんです」
「変わっているな、君は」
「よく言われます。よかった、部屋を譲ってもらえて。それでは、おやすみなさい。明日からよろしくお願いします」
 ラウルは恭しく一礼すると、部屋から出ていこうとする。カミリアは慌てて彼を呼び止めた。
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