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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
 ココアを諦め、自室に戻ってベッドに寝そべる。
 騎士としては1人前のカミリアだが、家事は壊滅的だ。以前、いつも用意してもらっているからとココアを作ろうとしたことがある。ココアパウダーをひと瓶まるまる入れ、牛乳を注いで火にかけて放置し、鍋をひとつダメにしてしまった。
 せめて混ぜればよかったものを、そのうち勝手に混ざってくれると思って放置したせいで、焦げたココアパウダーが鍋底にこびりついてしまったのだ。そのせいでハーディから台所に入ることさえ禁止されてしまった。

「明日、ハーディに頼んでみようかしら……?」
 甘味に恋焦がれながら、カミリアは瞼を閉じる。怒りで眠れないかと思ったが、疲れが押し寄せ、ぐっすり眠れた。

 翌朝、食堂に行くといつも以上に賑やかで、中央の席に人だかりができている。何事かと人々の間から覗き込んでみると、ラウルが他の騎士達と楽しそうに雑談している。ハーディを除く女性騎士がラウルを囲み、更に男性騎士が囲んでいた。中には立ち食いしてまでいる者もいる。
「朝から騒がしい。ちゃんと座って食べないか」
 カミリアが静かに殺気を放ちながら言うと、騎士達は不満げな顔をして散っていく。女性騎士達も、名残惜しそうに離れていく。

「やぁ、おはよう、カミリア。今日も麗しいね。一緒に食べない?」
「お断りします。騎士団長が風紀を乱さないでください」
 カミリアが威圧的に言っても、ラウルは小首をかしげるだけ。反省しないラウルに、カミリアは更に苛立ちを募らせる。
「僕は皆と楽しくおしゃべりしながら、食事をしていただけだよ? ここに来て間もないのに団長になっちゃったから、分からないことだらけでね。皆が色々教えてくれてたんだ」
 叱責しようとしたが、これ以上何を言っても暖簾に腕押しだろうと思い、諦めて隅の席に座る。

「大丈夫ですか?」
 ハーディが向かいの席に座り、カミリアの朝食を置いてくれる。ハーディの顔を見て、少しだけ平静を取り戻すも、怒りは収まらない。
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