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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「ありがとう、ディアス」
「いえ……。それにしても、新団長は人気ですね……」
 ハーディは横目でチラリとラウルを見ながら言う。つられて見てみると、女性騎士達が再びラウルを囲み、黄色い声を上げている。
「やかましくて仕方ない……」
「注意してきます」
「いや、いい」
 立ち上がろうとするハーディを引き止めると、彼女は一瞬、眉を寄せる。

「いいんですか?」
「注意しにいったところで、負け犬のひがみと思われるだけだ」
 ハーディは不満げな顔をしながらも、渋々座り直す。
「私は、ケリー団長が負け犬だなんて思っていません。他の騎士だって、きっとそうですよ。それに、接戦だったじゃないですか」
「ハーディ・ディアス、私はもう、団長ではないよ。接戦だったと言うけどね、ラウル団長には余裕があったよ」
 昨晩の試合を思い出し、カミリアは悔しさで下唇を噛んだ。

 カミリアの猛攻を避けるのに精一杯に見せかけていたが、あの時のラウルには明らかに余裕があった。きっとそれまでの試合同様、一撃で終わらせることもできただろう。なのに、ラウルはそうしなかった。
 それは何故か? カミリアは、ふたつの理由を見出した。ひとつはパフォーマンス目的。騎士団長を決める試合が1撃で終わってはあまりにもあっけない。場を盛り上げるためにあえて追い詰められ、一気に逆転したのだろう。ふたつめはカミリアへの同情。元騎士団長が突如現れた優男に一撃でやられたとあっては、示しがつかない。だからあえて剣を交えた。
 真実はラウルのみぞが知る。だが、カミリアは自分の導き出した答えがしっくり来る。だからこそ、ラウルが許せない。

「ハーディ。私、絶対に騎士団長に返り咲いて見せるから」
 騎士としてでなく、親友として彼女に告げる。ハーディは、普段人前でファーストネーム呼びをしないカミリアに強い意志を感じた。昔と変わらない負けず嫌いに、思わず笑みがこぼれる。
「私は応援してるよ、カミリア」
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