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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「僕、立派な騎士になってみせます!」
「その時は、心の底から歓迎するよ。それじゃあ」
カミリアは少年の黒髪を撫でると、彼に背を向け歩き出した。
「カミリア様ー! ありがとう!」
少年の声を背で聞きながら、カミリアは表情を曇らせる。
「この国も、いつまでこんなことを続けるつもりなんだ……」
ため息をつき、臙脂色の肩当てに印された、シャムスの国章である太陽に触れる。太陽の国と言われているシャムスだが、陰湿な習慣や風習、迷信が数多く存在する。
たとえば、先程の少年の頬にあった三日月の焼印。この国は未婚の妊娠、出産を忌むべき行為とされている。結婚していない女性の妊娠や出産が発覚すると、ふたりの馴れ初めを、拷問してまで聞き出させる。
この時点で女性が妊娠していた場合、男性だけが拷問される。
女性が子供を産んだ後、ふたりは磔にされ、間にはふたりの馴れ初めが事細かに書かれた看板が立てかけられる。国民は日頃の鬱憤を晴らそうと、磔にされた者達を罵り、暴力をふるった。そのため、磔期間を終える前に亡くなる者も、舌を噛み切って自害する者も少なくない。
ふたりの間に産まれた子供には、三日月の焼印が押され、少年のように理不尽な目に合いながら生きていく。
太陽を象徴とするシャムスでは月は忌むべきもので、特に三日月はその形から不完全なもの、他人に害をなすものとされている。
シャムスは髪色にもうるさい。太陽の色と言われているブロンドは至高とされ、夜空を連想させる黒髪と、太陽が沈む夕空を連想される赤髪も差別の対象になっている。そのため、ブロンドの髪を持つ者は横暴な態度を取る者が多い。
黒髪や赤髪が経営している店に行き、無銭で商品を持ち帰るということはよくある話だ。
夜空には悪魔が潜んでいるから見てはいけないという風習もあるため、シャムス人は夜になると雨戸を閉め、家で過ごす。
騎士団の戦闘力だけはどの国にも劣らないが、政治は絶望的に時代遅れ。それがシャムスの実態だ。カミリアはそんな自国に心底うんざりしている。
「その時は、心の底から歓迎するよ。それじゃあ」
カミリアは少年の黒髪を撫でると、彼に背を向け歩き出した。
「カミリア様ー! ありがとう!」
少年の声を背で聞きながら、カミリアは表情を曇らせる。
「この国も、いつまでこんなことを続けるつもりなんだ……」
ため息をつき、臙脂色の肩当てに印された、シャムスの国章である太陽に触れる。太陽の国と言われているシャムスだが、陰湿な習慣や風習、迷信が数多く存在する。
たとえば、先程の少年の頬にあった三日月の焼印。この国は未婚の妊娠、出産を忌むべき行為とされている。結婚していない女性の妊娠や出産が発覚すると、ふたりの馴れ初めを、拷問してまで聞き出させる。
この時点で女性が妊娠していた場合、男性だけが拷問される。
女性が子供を産んだ後、ふたりは磔にされ、間にはふたりの馴れ初めが事細かに書かれた看板が立てかけられる。国民は日頃の鬱憤を晴らそうと、磔にされた者達を罵り、暴力をふるった。そのため、磔期間を終える前に亡くなる者も、舌を噛み切って自害する者も少なくない。
ふたりの間に産まれた子供には、三日月の焼印が押され、少年のように理不尽な目に合いながら生きていく。
太陽を象徴とするシャムスでは月は忌むべきもので、特に三日月はその形から不完全なもの、他人に害をなすものとされている。
シャムスは髪色にもうるさい。太陽の色と言われているブロンドは至高とされ、夜空を連想させる黒髪と、太陽が沈む夕空を連想される赤髪も差別の対象になっている。そのため、ブロンドの髪を持つ者は横暴な態度を取る者が多い。
黒髪や赤髪が経営している店に行き、無銭で商品を持ち帰るということはよくある話だ。
夜空には悪魔が潜んでいるから見てはいけないという風習もあるため、シャムス人は夜になると雨戸を閉め、家で過ごす。
騎士団の戦闘力だけはどの国にも劣らないが、政治は絶望的に時代遅れ。それがシャムスの実態だ。カミリアはそんな自国に心底うんざりしている。