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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第3章 国令
「まったく、本当に面倒くさがりなんだから……」
 ラウルはやれやれと肩をすくめると、サウラの隣に座った。
「カミリア、僕の恋人になってくれるかい?」
「はいっ!?」
 突拍子もない告白にカミリアは素っ頓狂な声を出し、サウラは吹き出した。

「ラウル、ちゃんと説明してやれよ」
「恋人になって欲しいのは本当なんだけどなぁ」
「はいはい、そういうのはふたりきりの時にしろ」
 サウラが適当に流すと、ラウルは不満げに彼の顔を見てから、カミリアに向き直る。

「僕の恋人のフリをしながら護衛をしてほしいんだ」
「何故、恋人のフリを?」
「地位目当ての女性避けっていうのもあるんだけど、鎧を着たままだと悪目立ちするからね。それに、恋人なら、ずっと一緒にいてもおかしくない」
「理にかなってはいますが……」
 カミリアはラウルから目をそらす。理にかなってはいるが、納得はしていない。貴族のパーティについて詳しいことは知らないが、使用人ではダメなのだろうか? 何より、理由は自分でも分からないが、女性避けに使われるのが嫌だった。

「本当は、君と一緒にいたいからっていう理由なんだけどね」
 そう言ってウインクをするラウルを、サウラが小突く。
「うちの優秀な騎士を誑かすな」
「誑かすだなんて人聞きの悪いこと言わないでよ。僕は本当のことを言ってるだけだ。君も素直にならないと……」
「余計なお世話だ」
(兄弟みたい……)
 言い合いを始めるふたりに少し戸惑うも、和やかな気持ちになる。カミリアの視線に気づいたのか、サウラは咳払いをして座り直す。ラウルは横目でサウラを見ながら笑うと、カミリアに向き直った。

「で、どうかな? 僕の護衛、してくれる?」
「はい、もちろんです」
「あぁ、よかった。それじゃ、馬車で待ってるから最低限の荷物をまとめておいで」
 そう言って客間から出ていこうとするラウルを、カミリアは慌てて呼び止めた。
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