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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「ディアス、今いる騎士の半数をここへ。救護組を最低ふたりと……」
「団長、俺達もお供しますよ。トロールなんて力任せに動く連中、女じゃ太刀打ちできないでしょう?」
 ニタニタ笑うドゥムに殺意を覚えるが、大剣使いのドゥムがいると助かるのも事実。カミリアは殺意を押し込んで彼を見上げる。
「あぁ、頼んだ」
「仰せのままに。おい、お前達、仕事だぞ!」
 ドゥムが声を張り上げると、稽古をしていた約10人のドゥム派騎士が集まる。これにカミリアが集めた騎士と救護組を足せば、立派な討伐隊の出来上がりだ。

「ケリー騎士団長、お待たせしました。馬も間もなく到着するでしょう」
 ハーディは8人の騎士と3人の救護組を連れてきた。カミリアはざっと彼らを見回すと、確認するように頷く。
「ではさっそく行くとしよう。残った者は、城の警備を怠らないように」
「はっ!」
 警備を任された騎士達は、敬礼をする。彼らを頼もしく思いながら策を練っていると、数人の世話係が人数分の馬を連れてきた。どの馬もたくましい体つきをしており、毛並みも艷やかだ。カミリアは白い愛馬をひと撫ですると、世話係に向き直る。

「君達のおかげで、いつも状態のいい馬に乗れているよ。ありがとう。きっと馬達も喜んでいるだろう」
「もったいないお言葉です」
 最年長の男は、深々と頭を下げる。そのやり取りを馬の上から見ていたドゥムは、舌打ちをする。
「おしゃべりもいいですけどねぇ、女騎士団長! さっさと行きましょうよ」
「私にできることがあったら、なんでも言ってくれ。アレのことは気にするな」
 カミリアはドゥムをチラリと見上げて言うと、愛馬に跨った。

「相手は屈強なトロールだ。いつも以上に気を引き締めるように」
「はっ!」
「あのー……」
 士気が高まり張り詰めた空気を、若い男のユルい声が台無しにする。苛立ちながら声がした前方を見ると、美丈夫がカミリアを見上げている。腰に2本の剣を携えており、片方はシャムシールという曲剣だということが分かる。初心者には扱えない剣を所持していることから、手練だと容易に想像がつく。
 だが、持ち主の男はミルクティー色のウェーブがかかった髪に、青空のような美しい瞳を持つ優男で、とても剣を扱うような人間には見えない。
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