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氷の戦乙女は人たらし公爵に溺愛される〜甘く淫らに溶かされて〜
第1章 1章 くすんだ太陽
「君、そこをどきなさい」
「騎士団の方々ですよね? 僕、ラウルといいます。騎士団に入団したくて、遠い街から来ました」
 ラウルと名乗る男はカミリアの気迫に気圧されることなく、にこやかに自己紹介をする。落ち着き払ったラウルの態度は、一刻も早く鉱山に行きたいカミリアを苛つかせた。

(ここで怒ったら、ドゥムに何を言われるか分からないな……)
 カミリアは大きく息を吐くと、ラウルを見下ろす。
「私達は今からトロールの討伐に行かなくてはならない。悪いが日を改めてくれないか?」
「そうですか」
 ラウルも諦めただろうと思ったカミリアが退くように言おうとした途端、ラウルは笑顔を浮かべる。

「それじゃあ、僕を連れて行ってください。それで僕の実力を見て、入団させるか決めたらどうですか?」
「何を言っているんだ! そんなこと、できるわけないだろう」
「いいじゃないですか、連れてってやりましょーよ。たったひとりの入団希望者のために時間を割くのも、もったいないでしょ」
 ドゥムは悪意に満ちた笑みを浮かべながら言う。
(何か企んでいるな……。ドゥムなら、この青年を殺してまで私を陥れても不思議じゃない)
「断る。素人を連れて行って、何かあったらどうするつもりだ?」
 ドゥムはカミリアが断ることを見越していたのか、笑みを深める。

「おやおやぁ? 女騎士団長様は、たったひとりの民を守りながら戦うことすらできないのですか?」
「……分かった、連れていけばいいんだろう? ドゥム副団長、君の馬に彼を乗せてやるといい。確か、君の馬は何人乗ってもスピードが落ちることはない、とか言っていたな」
 安い挑発だと分かってはいるが、女ということを強調されると、引き下がれない。ラウルを連れて行く代わりに、ドゥムの馬に彼を乗せる。乗馬中なら、ドゥムもラウルに何かすることはないと考えた。何より、忌々しい男と同じ馬に乗るなんて考えられない。
「はっ、イヤミ返しのつもりか? ほらガキ、後ろに乗れ」
「はい、ありがとうございます」
 青年はドゥムの手を借りず、軽やかに馬に乗った。意外と筋力はありそうだと横目で見ると、カミリアは出立の合図を出して馬を走らせた。
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