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濡れた視線(改定版)
第1章 魅せられて
夏の陽射しの照り返しがアスファルトに輻射熱をもたらせ、マンションへと戻る道すがら、シャワーを浴びた全身に再び大量の汗を滲ませると『新居でのめでたい初夜、お近づきに!』と酒屋の店主から頂いた缶ビールのプルトップを開け、家族風呂と見紛うほど大きい浴槽に浸かりながら、独り心機一転の門出を祝った勇矢。

そして翌朝、風に翻るレースのカーテン越し、開け放った北面のベランダからは小鳥達のさえずりが聴こえ、清々しい目覚めを覚えていた…。

ネルドリップ珈琲にハムエッグトーストとシーザーサラダ。代り映えの無い朝食を済ませ、北面のベランダから望む大家の屋敷の全貌を眺めると、木造平屋の立派な家屋に、そこを囲む庭園を含め、およそ360坪はありそうな広大の敷地面積。緑が美しい苔庭にはセンス良く敷石が置かれ、松、楓、紅葉、桜の木立の狭間から家屋を望むと、6面に連なる雪見障子のついたガラスの引き違い戸が気持ち良く開けられ、縁側と、その奥に続く畳敷きの和室を覗かせながら、庭先に面した物干し場があることから、そこが屋敷の裏庭であることが容易に見て取れていた。

(これだけ広いと清掃だけでも大変だろうな…)と、大家一人での家事仕事の大変さも汲み(ご挨拶は昼食も終えて一息就ける14:00位かな…)と、勇矢が思う間もなくの事だった。たおやかな女性が縁側に姿を見せ、洗濯籠を片手に裏庭の物干し場へと歩み出ていた…。

アップに纏め、バレットで留められた髪に後れ毛を覗かせながら、寝間着にも見える生成り色のワンピースはニットなのだろうか?大きく開いた襟ぐりに覗く青白い鎖骨。そして曲線を帯びた躰を無駄なく被う薄生地。その刺激的な姿態を目の当たりにし、勇矢はベランダから居室内へと身を潜め、レースのカーテンを隠れ蓑に、その一挙手一投足を見守っていた。

(すっぴんにしても綺麗な人だ…)見惚れる勇矢を他所に、両手で干したシーツの皺を丹念に伸ばしながら、その都度たおやかに揺れる胸の膨らみ…。

訝し気に目を凝らして見れば、突起した乳首の造形がはっきりと薄生地に模られ、レースのカーテン越し、ゴクリと息を呑み干す勇矢に、あたかもノーブラであることを主張するかのように映っていた。
















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