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濡れた視線(改定版)
第6章 蛍の求愛

『あらっ、諏訪さん…?』潤子はそっと歩み寄った簀戸越しに声を掛けると、忙しなく施錠を解き、その引き違い戸を開けた。

『なにか物音がするので、何かと思ってたら…』

『あっ、奥さん、いらしたんですか!?簀戸が閉まってたもので、お留守だと思いましてね、岩手の蔵元から新酒のサンプルと大量の新ジャガが届いたもので、ご贔屓にして頂けてるお礼に、と、思いまして。いやぁ、まだ就寝中とは思わず、本当に申し訳ないです…』

一心腐乱に振り乱していた髪のまま、慌てて着込んだ潤子の浴衣姿を目にし、気まずそうに頭を掻く店主。

『いつも心遣いありがとう。もうこんな時間だなんて、私こそ正午近くまで寝入ってしまい…。せっかくの御好意なので、遠慮なく頂きますね!』

『それはそうと、最近奥さんのマンションに越して来た男前の方。数日前に来店されましてね、転居先の大家さんへ御挨拶用に…って言われるもんですから、何気なくお聞きしたら煉瓦貼りのマンションだってお聞きして、お節介だったかもしれませんが、奥さんがお好みになる銘柄を教えて差し上げたんですよ…』

『あらっ!そうだったんですね…』薄笑いの微笑みを店主に返すと、その視線の矛先が肌蹴かけた浴衣の胸元に注がれ、咄嗟にその胸元を左手で抑えた潤子。

『じゃぁ、この辺で失礼しますね…』と、潤子が畳み掛けるように遮断すると、慌てながら挨拶を返す店主は、空き瓶が戻されたP箱を縁側の下から回収し、小走りに帰って行った。

そして訝しい想いを遺しながら簀戸を閉め直した潤子は、浴衣の胸元をあざとく肌蹴させ、再び寝室の蚊帳を掻い潜っていた…。

『潤子さん、誰…?』 『うぅん、今度は出入りの酒屋さん。気にしないで…』

『それより凄く良かった!セックスの相性って確かに大切。昨夜を跨いだにしろ2度も、でも貴方は…出せてないのよね?』

『あっ、それは気にしないで欲しい。人並以上なのは何人かから言われて自覚してるし、それに見合う精巣構造だから、満杯になり辛いのか、例えるなら注いだビールが溢れ出すか留まるかの差で、僕のは留まる方が多いのかも…』と、苦しまぎれな弁明をする勇矢。

潤子と出会って以来その魅力に憑りつかれ、連日連夜に渡り、盛りのついた中高生のように自慰に興じ、さすがに抜き過ぎの感は拭えなかった。
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