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濡れた視線(改定版)
第7章 墨画の女
(誰かに気付かれることもないし…)裸の身にバスローブを羽織り、歩み出た北面のベランダ越し、所在なさげに揺れる漲りを暗がりの中に曝け出すと、心地よい夏の夜風が全身を撫でるようにそよぎ、夕涼みがてらに潤子の屋敷を望めば、浴室の窓から燦燦とした明かりが漏れ、屋根伝いに伸びた煙突からは立ち昇る白煙が薫れていた…。

(オヤスミ潤子…)と胸の内に呟き、仰向けに伏したベッドの上でそっと瞼を綴じると、潤子と響子の姿態が代わる代わる浮かんでは滲み、ベッドの隅に置いた携帯を手にすると、再び響子の画像をピンチアウトした勇矢。

(綾子には早急に履歴を消すようにと言っておき、俺は盛りのついた野犬か…)と、大の字に投げ出した下肢に治まりを見せない漲りを手に、拡大された響子の画像を見つめながら、その迸る精をティッシュに絡め取った勇矢。

やがて急襲する睡魔はベッドの中に沈めるかのように、勇矢を深い眠りへと誘っていた。

そして迎えた月曜日の朝。健やかな目覚めを覚えるとともに、疲弊していた躰は嘘のような回復を見せ、意気揚々と出社した職場で抱えていた商店建築の工程管理をチェックし、午後からはヘルメットに安全帯を携え、現場でビデオ撮りにした工程記録を再び社に戻っての編集作業。

目まぐるしい勇矢の日常が再開し、あっと言う間に週の中半を迎えた水曜日。早朝からの工程会議を終え、本来組まれていた木曜日と金曜日の工程が現場自治会の祭りと重複し、自治会からの強い要請で止む無く休工となり、皮肉なことに夏季休暇を終えて仕事を再開したばかりの勇矢に、再び4連休がもたらされていた。

慌ただしい週の3日間が怒涛の如く過ぎ、帰りしなのデパ地下でポークソテーを買い求めると、勇矢がマンションに戻る頃には、既に21:00を周っていた…。

(はぁっ、疲れた…)リビングに入るや否や、着衣を全て脱ぎ捨て、全裸で浴室に駆け込んだ勇矢。こんな日はシャワーとばかりに、温水と冷水を交互に浴びせるのが勇矢のスタイル。潤子が良く似合うと言って持たせてくれた矢絣模様の甚平を纏い、買い求めたポークソテーにカットレタスのサラダボールを手早く作ると、シングルモルトのグラスを傾けながら、至福の時を迎えていた。と、そのタイミングで、勇矢の携帯がラインの着信を告げる小気味良い音色を放っていた…。
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