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濡れた視線(改定版)
第7章 墨画の女
【勇矢さん、この時間帯なら帰っているかな?連日に続く暑さの中でするお仕事は大変でしょう?精の付く和え物を作ってみたので、瓶詰めにして宅配ボックスに入れて置きました。中身は大蒜のスライスとオクラの輪切りをリンゴ酢に漬け、風味付けにマヌカハニーを和えてみたの。毎日酷使する躰の為にも良いので、晩酌のお供にでも加えてみてね、亜鉛が多く含まれているので、私の為にもね?(^_-)-☆】

一瞬くすっと笑い、潤子が綴った文面を読み終えると、急ぎ足で宅配ボックスのある一階に降りた勇矢。

手にしたその瓶詰めを見ながら、一段づつ階段を昇る足取りはやけに軽く、そんな潤子の想いが日を追うごとに浸食し、勇矢の心の中に巣食い始めていた。

【潤子さんありがとう!前に貰った大蒜のたまり漬けも少なくなってて、たった今晩酌に合わせて食べてみたけど、僕の好きなウイスキーとも相性が良くて、ほんのりと甘酸っぱさが舌に残り、凄く美味しいです!それと今更ながらだけど、先週の日曜日は避妊具も着けずに、大丈夫かな?とも思って】

激しい欲情を覚える中、望まれるままに己の精を放ち、ずっと気掛かりでいた勇矢。すると、そんな不安も他所に、潤子からのラインメッセが間髪置かずに返されていた。

【恥ずかしいけど正直に言うね?勇矢さんに出会ってから私なりに予感していた事で、実はその数日前から経口避妊薬を服用しているの。国内製の効き目の高いジェネリック医薬品で、副作用も無く躰にも優しい物だから、勇矢さんは全然心配しなくて大丈夫よ?】

【ありがとう、日曜日以降ずっと気掛かりだったんだけど、これで安心しました。おこがましいかも知れないけど、次からはコンドームを持参するね?】

【うぅん、私の画策がばれちゃったけど、避妊薬は生身の勇矢さんを感じたいからで、勇矢さんには躊躇い無く私の中に放って欲しいの、私も私の躰の芯で、勇矢さんが放った証を感じたいから…】

ラインメッセージを応酬させる束の間。そのいじらしい潤子の想いが勇矢の胸の中に重く淀み、明日からの4連休を伝える事も忘れ、仰向けに伏したベッドで眠りに就いていた。

やがて清々しい木曜日の朝を迎え、代り映えのない朝食を簡単に済ませると、ホームビデオに撮り溜めた工程記録をPCで編集し始めた勇矢。それも休んだ分だけ仕事が詰まるのが解っての事で、生真面目な勇矢の性格を露呈させていた。
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