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濡れた視線(改定版)
第2章 魔性が潜む屋敷
ほんの数時間前、勇矢が注ぐ熱い視線を他所に、熟れた女のエロスを余すことなく晒していた姿態とは打って変わり、たった今勇矢の目の前に正座する潤子の姿態は、ものの見事に変貌を遂げていた…。

『シュッとした肢体にホワイトジーンズ。凄くお似合いですね…』

『えっ?あ、いゃ…』

月並みな挨拶を交わした後、ふいに突いて出た潤子の言葉に照れ笑いを浮かべる間も無く、ブラックオパールのような瞳を潤ませ、勇矢の全身に汲まなく視線を注いだ潤子。

『梅雨も明けたと言うのに少し蒸しますね?さ、どうぞおあがりください…』

翻した左手で頬を仰ぐ仕草を見せ、玄関のたたきで立ち竦む勇矢に正座の半身を深々と屈めると、潤子は手にした上履きのスリッパを上がり框に揃え置いた。

と、その一瞬。ノースリーブの大きな襟ぐりが前下がりにたわみ、勇矢がとらえた視線の矛先には、卑猥に揺らぐ乳房の谷間が見て取れていた。

『どうかなさいました?さ、どうぞおあがりください…』

『あっ!はい。では遠慮無く、失礼致します』

突然の出来事に驚きを隠せずにいた勇矢は、踵を返すように軽やかに立ち上がる潤子に手招かれながら、その屋敷の奥へと続いた…。

(間違いなく着けてない…)目頭に焼き付く艶めかしい光景もそのままに、腰をくねらせながら屋敷の奥へと歩む潤子に続くと『一番涼が取れるから…』と、裏庭にも通ずる16畳の和室へと通されていた。

『船本さん、少しの間だけ、好きにされてて下さいね』

『あ、はい!でもお構いなく…』

通された和室はラタンの衝立で簡易に2分割され、廊下側に面した和室にはペルシャ絨毯の上にビクトリアン調の応接セットが設えられ、ラタンの衝立を境にし、裏庭に通じる奥の和室は打って変わり、申し訳程度のスタンドライトが無造作に置かれ、その片隅に積み重ねられた組布団から、寝室として利用されているのが伺い知れていた。

(そうそう、今朝ここから彼女が姿を見せたんだ…)勇矢はラタンの衝立を搔い潜ると、縁側から望む物干し場で風を孕んで揺れる艶やかなランジェリーを一瞥すると、しれっとした面持ちで廊下側の応接へと戻り、再びジャガード張りのソファーに腰を沈めた。
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