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濡れた視線(改定版)
第2章 魔性が潜む屋敷
『生意気に聞こえたなら、ごめんなさい…』  『うぅん、全然そんな風には…』

『船本さんの仰るとおり、生きていれば色んな出来事に遭遇しますね。問題はそれをどう受け留め、何に気づき、どう改め、何を以て判断し、行動するか…。私は不倫という経験をする中で、私の中に芽生えた愛欲の恐さも知り、結果的に得たものは愛憎という感情でしかなかったんです。自分が何を欲し、何を信じ、何に執着しているのかさえ判らなくなって…。それで逃げ出すようにアメリカへ向かったんですけど、そんな時の旅は良いですよ。西海岸に吹く海風ってとても気持ち良くて、私の中のもやもやした感情や憤りを、全てリセットさせてくれましたから…』

『仰る事が凄く理解出来ます。僕に不倫の経験は無いですけど、先ほど話した女性との別れから、自分をリセットする意味でも、こちらへの転居を決めたんです』

『そうでしたか…。これも何かのご縁かもしれませんね、私の様に枯れて行くしかない叔母ちゃん世代と違い、男盛りの30代。これからが楽しみですね…』

『叔母ちゃんだなんてとんでもない、箕田さん全然お若いですよ?でも、お亡くなりになられたご主人とはどんなご縁で知り合われたんですか?』

『もう故人となってしまいましたけど、生前病に伏していた父に勧められ、無理やりお見合いをさせられた相手だったんです。アメリカから日本に帰国して間がない5月の連休中に初めてお会いし、1年間お付き合いするうえで特別な感情も持てなかったんですけど、何処となく若い頃ハンサムだった父にも似て、押せ押せのプロポーズを受けるまま28歳の5月に…』

『ご主人、箕田さんにぞっこんだったんですね。失礼かも知れませんが、それは僕にも理解出来ます…。でも、お一人で寂しくはないですか?』

『寂しく無いと言えば、それは嘘かな…』と、空になったグラスの淵を指先で1周なぞると、潤子はブラックオパールのような瞳を潤ませていた…。

『ご挨拶のつもりが、ご馳走にまでなって、すっかり長居してしまいました…』

『どうかお気になさらず、こちらこそ無理に引き留めてしまったみたいで…』

柱時計が16:00を周っているのを知り、慌ててお暇の挨拶を潤子と交わすと、帰り土産まで持たせ、玄関先で見送る潤子の視線を背中越しに感じながら、広大な屋敷をあとにした。
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