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また桜は散り過ぎて
第13章 クリスマスの夜に

 二杯目のコーヒーを頼む頃には客は半分くらいに減っていた。
そろそろ家でのクリスマスに備えての買い物時間なのだろう。
店内の客は若いカップルや一人客ばかりだった。
 さらに二杯目も飲み終わる頃には、店には私の他に一人だけ。
その一人もついに席を立った。
店を出るその人の後姿を見送ってから時計を見ると、6時を過ぎたばかりだった。
 片付けている小西さんに、
「なんだか今日はみんな早く帰るんですね。予定があるんでしょうね」
声をかけながら静かになった店内を見回す。
すると、
「今日は6時で閉店、とドアに貼ってありますからね」
えっ!と叫んでドアを見ると、たしかに本日6時閉店と書いた紙が貼ってあった。
「実は8時から貸し切りなんです。この商店街で迎える初めてのクリスマスでしょ、
 なので商店街のみなさんをご招待するんです」
なんと粋な計らいをするのだろう。
商店街の一員に新しく加わった喫茶店は、人と人との繋がりを大切にしているのだ。
・・やっぱり、小西さんはただの良い人じゃない。本当に良い人だよ・・


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