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また桜は散り過ぎて
第3章 一つ目の桜
 それはいいにしても、目的地は未知の場所。
一方通行の細い道だから両側の店面は難なく見える。
だけど、それらしき店が見つけられない。
だいたい、この店の名前、なんて読むんだろう?
イタリアンならイタリアンらしく国旗とかが目印で出ていても良さそうだが。
 あせる気持ちが足を早めてくれるのはいいのだが、
すたすた歩いていたら通りの端まで来てしまった。
時間的にはこれより先ではなさそうだと折り返して通りを戻る。
もう、いったいどこなのよ、と見つけられないイライラのせいで、
仲間に電話なりラインなりして場所を聞くという考えがすっぽりと抜けていた。
 大きく肩で息をして再び歩き出そうとしたその時、
立ち止まっていた場所のすぐ前の店から急に人が出てきた。
自分では気が付かなかったのだが、あわや接触という位置に私が立っていたらしく、
出てきた人がおっと!と声を上げた。男の声だった。
こっちも驚いたが声は出ず、代わりに目をむいた間抜けな顔を向けてしまった。


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