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また桜は散り過ぎて
第4章 喫茶・桜葉
私のもとにコーヒーとケーキが運ばれてきた頃には、客は半分近くまで減って、
にぎやかから穏やかに雰囲気が変わっていた。
ごゆっくりどうぞ、と引き上げる店主の背中を見送ってから、
まずはコーヒーに手を伸ばした。
薫り高いコーヒーの、まずは香りをかいでから口をつける。
言うまでもないがインスタントコーヒーとは全然違い、
香りを嗅いでいるこちらのほうが吸い込まれてしまいそうなほどの力強さだ。
次にチーズケーキ。素朴な見た目のベイクドチーズケーキだ。
フォークを入れた瞬間にまったり感の手ごたえがある。
そして口に入れると濃厚なチーズの味がいっぱいに広がり、ほっぺたがキュッとした。
こんなに美味しいケーキが作れるのか、と置いたままのメニューを片手で開いてみる。
ティラミス、シフォンケーキ、ガトーショコラ。
全部制覇を心に誓い、他には何があるのかと目を通していると、
サンドウィッチやナポリタンと一緒にチャーハンと書いてある。
え?喫茶店でチャーハン?そういうとこなの?喫茶店って。
ナポリタンとかは、テレビの喫茶店特集なんかで見て知っているけど、
それ以外のご飯ものっていうのもあるところなんだ・・
その時ふと、省吾さんのことを思い出した。
シェイカーを振るバーのマスターは、とっても美味しいシチューも作れる。
この人もきっと、まだ食べたことないけど美味しいケーキを作る人だから、
味に期待が持てそうだ。
共通点があるバーのマスターとと喫茶店のマスター。
なんだか、運命的な出会いっていうのかしら、こういうの、と
カウンター越しにおじさん達とおしゃべりしているマスターを眺めた。