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また桜は散り過ぎて
第6章 さくらバーで惑わされ
 突然背後から声をかけてきたのは、常連のマコトさんだった。
テーブル席に座っていたようで、省吾さんばかり見ていた私は
周りの客が目に入っていなかった。
「やだ、マコトさん、脅かさないでくださいよ、背後からいきなり。
 省吾さんもあやしいけどマコトさんだってあやしいですよ」
男を見る目が未熟なんで、と鼻を鳴らしてマコトさんから省吾さんへと視線を向ける。
すると、マコトの言う事は間違っている、と
ちょっとふざけた口調で周りの客を巻き込んで笑った。
私もつられて笑った。
 こういう、じらしながら気持ちを引っ張っていく省吾さんのような男に
自分を預けてみたい、
と出会ってからここまで思ってきた。
けれど、恋の駆け引きとはあまり縁のなさそうな小西さんのような男にも、
興味を持ち始めた。
平たく言えば、小西さんのこともいいなと思い始めたのだ。


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